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第2話 路地裏の惨劇

Penulis: みみっく
last update Tanggal publikasi: 2025-11-26 11:51:38

 この領地の価値は計り知れない。王都に近く、それでいて森と魔獣が自然の要塞となる。そのため、国王から厚遇され、統治権を一任されているのだ。

 俺の住む小屋は――そんな危険な森のど真ん中にある。

 だが、俺にとっては庭のようなものだ。猛獣が出ようが、魔獣が現れようが、敵兵士が踏み込んできたところで――どうにでもなる。

 実際、敵国がこの領地を攻め込んできたこともある。

 だが――俺一人で蹴散らした。俺の持つほぼチート級のスキルと身体能力で、あっという間に敵を退けたのだ。

 その圧倒的な実績があるからこそ、俺は自由にこの領地の統治を任されている。どこか安心しているような国王の態度を見れば、この領地の防衛が俺にとって造作もないことだと信じているのだろう。

 ――この領地と森は、まさに俺の庭だ。

 誰が来ようと、俺が守る限り、そう簡単には落ちない。

♢♢♢

「俺が辺境伯となり数週間経ち、少しは落ち着いてきたな……」

 そう呟きながら、ユウは夜の大通りを歩いていた。

 それにしても、エリーにリリアとエリシア、ミリーナには助けられる。領地経営なんて全く分からないのだから。

 ブツブツと独り言を言っていると、路地裏の方から女の子の悲鳴が聞こえてきた。

「疲れてるんだけどなぁ……」

 周囲を見回すが、警備兵の姿は見当たらない。放っておけるわけもなく、ため息をつきながら悲鳴の聞こえた裏路地へと足を踏み入れた。

 路地裏へ足を踏み入れた瞬間――世界が一変した。

 まるで街の喧騒が断ち切られたかのように、**音が消える。**風すら止まり、冷え冷えとした空気がじわりと肌を刺した。壁の隙間から漏れ出る青白い光が、陰気な影を伸ばし、ゆらゆらと揺らめいている。

 道は細く歪み、無秩序に積み上げられたゴミ袋が異様な沈黙を保つ。まるで、何かが潜んでいるかのように──得体の知れない視線が背後から感じられる。

 鼻を突くのは、腐臭と湿気の入り混じった独特の匂い。地面に広がる黒ずんだ染みが、ただの泥なのか、それとも……。遠くで響く、何かが軋むような音。それは風のせいか、それとも──誰かの気配か。

 影と影の狭間に、じっと潜むものがある。

 この場所は、夜の闇を飲み込み、沈黙の恐怖を孕んでいる。

「これも改善しないとな……」

 そう思いつつ先に進んで行くと、女の子が襲われている現場に遭遇してしまった。

 殴られ口から血が流れ、顔は腫れ上がって見るも無残な状態だった。口を押えられ、衣服は引き裂かれ、ナイフを突きつけられている──レイプされている最中だった。

「んっんっ……暴れたり……大声を出せば……殺すからな! んっんっ……はぁはぁ……」

 男の声が聞こえる。女の子はただ涙を流し、苦痛に耐えているだけだった。

 その光景を目にした瞬間、ユウの頭に血が上るとともに吐き気がした。

 瞬時に、音もなく男に近づく。殺す? そんな甘いことはしない。俺は今、かなり怒っている……簡単には殺さないぞ。

 ユウが最近作り出した、時間の影響を受ける収納空間。通常の倉庫やバッグとは異なり、そこは時の流れそのものが不確定な、未知の領域だ。だからこそ、そこに生き物を入れることは実験の一環でしかなかった。

 以前、そこに入れた生物は生きてはいた。しかし──その生物に問いかけても、答えはない。沈黙だけが広がる。何が起きたのか、何を経験したのか、記憶すら曖昧なのか。

「まぁ、そんなことを深く考えるほどの価値はないだろう。」

 淡々とそう思いながらも──ふと、頭をよぎる。

(気が向いたら、取り出して様子を聞いてみるか。)

 今、監禁された時間の囚われ人は、何を見たのか。それは、この空間のさらなる可能性を示しているのか――それとも、ただの狂気か。

 突然、女の子を襲っていた男が消え失せる。ユウはぐったりと横たわる女の子に近寄った。

 白っぽいワンピースに小さな花模様の縁取りが施されたそれは、無残に引き裂かれ、汚れて半裸の状態で薄汚れた地面に横たえられている。女の子は涙を流し、完全に放心状態だった。近寄っても何の反応もない。

 ユウは膝をつき、そっと回復魔法と洗浄魔法をかけた。収納から下着とワンピースを取り出し、抱き起こして着せてあげる。このまま放っておけば、また同じような連中が寄ってくるだろう。

「で、どうする……?」

 放っておくわけにもいかない。孤児院なんて近くにないしな。連れて帰るのは、あまりにも衝撃的な内容だ。説明もしたくないし、女の子も聞きたくないだろう。

 町から少し離れた場所にある空き家を使うか。

 女の子を抱きかかえると、彼女はぎゅっとしがみつき、すすり泣く声が聞こえ始めた。どう接していいのか分からない。慰めても逆効果かもしれない……。ユウはただ黙って頭を撫でながら歩き続け、目的の小屋にたどり着いた。

 改めて少女を見ると、小柄で華奢な体つき。長年の孤児生活の影響か、抱きかかえていても驚くほど軽く感じた。淡い銀髪は夜の月光のようにほんのり輝くシルバーで美しく、透き通るような青紫の瞳が印象的だった。出血していたことから、今回が初めての被害だろう。洗浄し回復魔法で元通りには戻したが、記憶が残っているのがつらいだろうな、とユウは思った。

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